shoryu20の忍たま日記

『忍たま乱太郎』について色々と書いていくブログです。藤崎竜さんの『封神演義』と柴田亜美さんの『南国少年パプワくん』のレビューもあります。

「九竜頭の四聖⑤ -天才・楊戩-」 『封神演義』第40回

「九竜頭の四聖⑤ -天才・楊戩-」

封神演義』第40回

 

今回の申公豹は四聖が西岐を攻撃しようとしている事を知らせて聞仲を戦いの場に引きずり出している。

黒点虎や妲己や聞仲と話をしている印象が強い申公豹であるが、それとは別に独自に動いている事も多い。

まず太公望の実力を測って自分のライバルにすると、太公望と王貴人を戦わせて、妲己太公望の存在を無視出来ないようにした。

その後、妲己に捕らわれた四不象を助けて太公望が西岐へと逃げられるようにし、さらに酒池肉林の時には黄飛虎を使って姫昌を助けて後に太公望と黄飛虎と姫昌が一緒になる縁を作った。

そして今回の話で聞仲を戦場に出して太公望との面識を作った。

この後にも太子二人に関わり、周の軍師である太公望が殷の太子を倒すと言う構図を作る等、物語中盤までの申公豹は殷周易姓革命の形を作る事に尽力していた。太公望が周と崑崙側を、妲己と聞仲が殷と金鰲側をまとめ、フリーの立場である申公豹が両者を繋いで戦争の形を作ったと言う感じになっている。

申公豹は封神計画には一切関わっていないのだが、封神計画や妲己の背後に歴史の道標と呼ばれる存在がいる事は嗅ぎつけていて、その歴史の道標の正体を暴く為に殷周易姓革命と言う歴史の変わり目を自分なりに作っていたと思われる。後に申公豹自身が語っているが「ヒマそうに見えてやる事はちゃんとやっていた」。

 

張奎登場。この時はまさか主人公チームの最終メンバーに入るとは思いもしなかった。

 

今回は楊戩がとにもかくにもカッコイイ回。

普通、少年漫画のバトル作品と言えば主人公側より敵側の方が強いのだが、今回は「四聖はかつて妲己三姉妹を撃退した」「四聖の中では王魔が一番強いらしい」と言う流れで「楊戩が王魔に圧勝する」としたのが面白い。普通だったら、四聖を一人ずつ倒していき最後に一番強い王魔をどうやって倒すのかと言う展開になるのだが、本作ではいきなり楊戩が王魔を完膚なきまでに倒してしまう。

主人公側に強いメンバーがいる事自体は珍しくないが、その場合は何かしらのリスクやら制限やらがあって最強メンバーは実力をフルに使えないようにするのだが楊戩は最初から最後まで最強としてヘタレる事も弱体化する事も無く活躍し続けた。

 

「お遊びがすぎるぞ王魔!!」がカッコイイ楊戩だが、この台詞は敵に向けて吐くにはちょっとした違和感を覚える。今回の楊戩の王魔に対する態度は敵味方と言うより「はしゃいだ身内をたしなめる」ように見える。

後に明らかになるが、楊戩は通天教主の子供である。本人は「僕は人間です」と言ったように自分が通天教主の子である事も妖怪である事も否定したわけだが、王魔との戦いでは初めて金鰲の仙人と戦った事で無自覚に「通天教主の子」の部分が出てしまったのかもしれない。

 

楊戩は「通天教主の子」で「妖怪」である事を隠して否定して今まで生きてきている。本人も「人間社会において嘘の自分でいる事は本当の自分をさらすより楽だ」と述べている。ここで言う「人間社会」と言うのは妖怪仙人が殆どいない崑崙の事だと考えられる。つまり「崑崙では嘘の自分でいる事は楽だ」と言う事になる。

しかし、ここで一つ問題が起きる。封神計画の実行により長らく関係が途絶えてきた崑崙と金鰲は本格的な戦争状態に突入し、崑崙の仙人は金鰲の仙人と戦う機会が生じた。楊戩も例外ではなく、今回の九竜島の四聖の他、魔家四将、呂岳、趙公明、仙界大戦と次々に金鰲の仙人と戦っている。つまり「通天教主の教え子達」で「妖怪」である者達と戦っているのだ。それは「隠して否定してきた自分と同じ存在を倒す戦い」と言える。

楊戩は崑崙の仙人を助けて金鰲の仙人を倒していく事で「崑崙の仙人としての自分」を肯定し、それと共に「金鰲の妖怪としての自分」を否定し続けていく事になる。自分を肯定しながらもう一人の自分を否定していく。王魔に対して楽勝を収めながらも楊戩の苦闘はここから始まる事となる。