翔龍shoryuの忍たま日記

『忍たま乱太郎』について色々と書いていくブログです。『ドラゴンボール』や藤崎竜さんの『封神演義』のレビューも書いています。

「老いたる象徴と風の分岐㊤」 『封神演義』第147回

「老いたる象徴と風の分岐㊤」
封神演義』第147回

 

聞仲を乗せた黒麒麟の先に美しい夕陽が……。
実を言うと、黒麒麟の行き先に夕陽があるのはおかしい。と言うのも「海の上にある金鰲島を潼関を越えて移動させた」となっているので「金鰲島は東から西へと移動した」となる。つまり「聞仲が帰るべき先は東にある朝歌」となり、本来なら「聞仲の背後に夕陽がある」べきなのだ。しかし、ここでは「聞仲の行き先に夕陽」を置く事で聞仲と殷の終焉を示しているのであろう。

 

太公望と聞仲の最後の戦い。
思えば太公望と聞仲は共通点が多い。
太公望は殷によって一族を滅ぼされ、聞仲は羌族によって朱氏を失っている。
そして太公望も聞仲も人間界の為に仙道の力を得た。
共に「鞭」の宝貝を使い、敵の宝貝攻撃を防ぐ霊獣と一緒にいる。
仙道でありながら人間界の国と関わり、自分の理想を実現しようと戦い続けてきた。
太公望 対 聞仲。そこには善や悪は無い。
ここにあるのは「歴史の変わり目」である。

 

太公望と聞仲の戦いは素手での殴り合いへ。
聞仲は既に目が見えなくなっていたので、太公望は距離を取って風で攻撃すればもっと楽に勝てたと思うが、そう言う手段は取らず、正面から聞仲を撃破する事に意味があるとした。
太公望は「いかなる手を使ってでも勝たなければならない」ではなく「いかなる手を使ってでも聞仲を乗り越えなければならない」と言った。これから聞仲に代わって人間界を大きく動かす事になる以上、太公望は「聞仲を越えた」とならなければいけなかった。それは太公望だけの話ではなくて聞仲にも「太公望は自分を越えた」と納得させなければならない。それは太公望に課せられた責任なのだ。

 

太公望と聞仲の戦いは聞仲が膝を付いた事で決着する。
この戦いで聞仲は涙を流し、自分から崩れ落ち、最後に弱音を吐く、と「心が折れた」「力尽きた」と言う表現になっている。
聞仲の心が折れるきっかけは親友である黄飛虎の死であるが、実は太公望も普賢真人を始めとする多くの仲間を失っている。しかし、そこで太公望は泣く事も崩れ落ちる事もせず、感情を押し殺し辛さに耐え聞仲と戦い続けた。太公望が崩れ落ちて涙を流すのは全てが決着した後の事。太公望と聞仲の戦いは心が折れそうになるのを最後まで耐えきった太公望の勝利となった。

 

老いたる象徴と風の分岐㊦」に続く。

 

 

封神演義 17 (ジャンプコミックスDIGITAL)

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