翔龍shoryuの忍たま日記

『忍たま乱太郎』について色々と書いていくブログです。『ドラゴンボール』や藤崎竜さんの『封神演義』のレビューも書いています。

「歴史の道標四 -BLACK BOX-」 『封神演義』第175回

「歴史の道標四 -BLACK BOX-」
封神演義』第175回

 

仙界大戦の時に聞仲は戦いを十天君に任せて自分は金鰲島を西へと進めていた。金鰲島は中国大陸東の海上にあったので、そこから周を攻める為に西へと進んでいたのだと思いきや、既に聞仲は崑崙山と周を攻め滅ぼした後に蓬莱島にいる妲己との決戦まで考えていた
確かに聞仲の戦力だと崑崙山と周を攻め滅ぼすのは確実だし、聞仲の元々の敵は殷を乱す妲己だったので、この選択は分かる。しかし、この時は一応仲間であった王天君の正体を見誤った事でこの計画は水泡と化してしまった。

 

太公望は殷の人狩りに遭った際に妹は殺されたと思っていたが実際は太上老君によって助け出されていた。逆に妹から見れば、仙人界に上がった事で人間界から姿を消した兄こそ死んだ人間だったはず。
そして妹は結婚して子供を産んでやがて死ぬと「普通の人間」として人生を全うするのだが、太公望は「不老不死」となって若い姿のまま妹の曾孫である邑姜と出会う。
邑姜との出会いで太公望は失われたと思っていた自分の繋がりを感じた一方、仙人となった自分は既に「普通の人間」ではない事も感じたのではないだろうか? 自分の妹の曾孫である邑姜が周で仕事をする姿を見て太公望は人間界から去る決意をする。

 

太上老君との夢の中で太公望人狩りに遭った時の老人との会話が自分の始まりだったと語っている。その時の羌族の老人の言葉は「復讐はお止めなさい。やるだけ無駄な事なのですから」であった。そこから太公望は復讐を越えて世の中全体を変える事を決めた。そして数十年後、全てを終えた太公望羌族の少女・邑姜から「私はあなたをとても誇りに思う」と告げられる。
羌族の老人に否定されてから始まった呂望の物語は羌族の少女に肯定されて幕を閉じた。本作における「羌族の呂望」としての物語はここで事実上終わっていて、この後の胡喜媚との戦いで呂望の肉体は失われ、以後は伏羲(王奕)としての物語が主軸となっていく。

 

邑姜は「殷王朝滅亡」で太公望の後ろ姿から天化を犠牲にした太公望の気持ちを感じたと思われる。それが今回の「私はあなたをとても誇りに思う」に繋がったのだろう。この言葉で太公望の心はどれほど救われた事か……。

 

人間界を去る事になった仙道達だが、妲己の居場所である蓬莱島の存在が判明した事で事態は「人間界を去る」よりも「妲己との決戦に向かう」と言う雰囲気が強くなった。皆、結構あっさりと人間界の人達との別れの言葉を述べていたが、ひょっとしたらこれが今生の別れになると思っていた人は実は少なかったのかもしれない。

 

土行孫は自分達は太公望達のレベルについていけないので行っても足手まといになると言うが、蟬玉は「太公望は私達がいないとダメ男」と笑って答える。最終的に太極図戦闘形態の為に皆の存在は必要だったのだが、冷静に考えると土行孫達が行っても妲己や王天君とは勝負にならないので、足手まといになると言う土行孫の指摘は正しい。土行孫はこういうところで状況を正しく分析出来るのだが意外と押しに弱いので結局は蟬玉に従う事になる。

 

韋護は独り身らしい。彼が人を心で見たり、よく知らない相手とはドライな契約関係に留めるのは独り身であった事と関係しているのかな?

 

崑崙山と金鰲島の落下現場では太乙真人が新たな拠点となる崑崙山2を建設していた。たった一人でわずかな期間で仙道達の新たな拠点を作ってしまう太乙真人に驚き。
新たに作られた崑崙山2は短い建設期間を思わせない性能を発揮する。崑崙山も金鰲島も長い期間に亘って整備が行われていなかったようなので、太乙真人がその辺りを最新の技術でより効率的な機能で作ったと思われる。ただし、高性能すぎる故に扱いが難しくなり、操縦出来るのが竜吉公主のようなエネルギー値の高い仙道ではなく太乙真人や雲中子のような細かい操作が出来る仙道に限られてしまった……。

 

遂に太公望元始天尊から封神計画の真相を聞かされる事となる。この時の封神計画や王天君について語る太公望に対する元始天尊の反応が意味深。
元始天尊にとって伏羲は共犯みたいな関係かもしれないが、その一方で王奕や太公望や王天君に対しては今も自分の弟子として見ているところがある。太公望と王天君の謎が解かれ、二人が王奕に合体した時、場合によっては伏羲の復活によって太公望と王天君と言う自分の弟子が完全に消えてしまう可能性がある。元始天尊からすると、太公望に対しては懺悔の気持ちがあったように思える。(実際、元始天尊は王天君からの復讐を自分の業として受け入れていた)

 

妲己と女媧の居場所が明らかになった事を受け、申公豹は遂に最強宝貝・雷公鞭を初めてフルに活躍させる時が来たと宣言する。
さて、申公豹が封神計画の事を知ったのは第1回の時と思われるが、どうして申公豹は封神計画に興味を持ったのか? おそらくそれは封神計画が「太上老君を含めた三大仙人で決めた計画」だったからと思われる。
太上老君は仙人界とも関わりを殆ど持たず、表向きは何をしているのか謎の人物である。そんな太上老君妲己を倒す為に封神計画を作った。申公豹としては珍しく表舞台に出た師匠の名前に関心を抱いたのではないだろうか。
封神計画の表向きの名目は妲己を倒す事であるが、通天教主によると今の妲己を倒せるのは太上老君か申公豹ぐらいらしい。つまり、普通に考えたら、太上老君も関わっている封神計画の実行者は実力的にも格的にも申公豹が相応しかったはず。しかし(当時の申公豹が妲己サイドにいたとは言え)、実際には申公豹ではなくて太公望と言う無名の道士が選ばれた。自分の師匠が関わった計画を任された人物として、申公豹は太公望に興味を持ったのかもしれない。
その後、申公豹は太公望を邪魔したり助けたりしながら自身は封神計画の謎を解いていき、敵が歴史の道標・女媧で太上老君の参戦が必要不可欠だと知ると、太公望を使って太上老君を強引に参戦させる事になる。
歴史の道標・女媧の存在を知った人物のうち、元始天尊と通天教主と聞仲は戦う事を決め、妲己はその力を利用する事にし、趙公明は特に関心を抱かなかった。そして太上老君だが、途中まで封神計画に関わろうとしなかった事、太公望に向かってあがいても結果は同じだと告げた事から女媧と戦うのを諦めた節がある。ひょっとしたら、弟子の申公豹はそれに対して苛立ちを覚えたのかもしれず、この後、申公豹はやる気の無い太上老君を説得したり叱ったりしながら戦地へと強引に連れて行く事となる。
こうして見ると、本作における申公豹の行動理由の一つに師匠・太上老君の存在が大きくあったのではないかと思われる。これまで分からなかった師匠の真意に近付きたいとして謎を解いていき、謎を解いた後は師匠と共に歴史の道標・女媧を倒すと言う目的を果たそうとしたと。

 

歴史の道標五 -第三の島・蓬莱島-」に続く。

 

 

封神演義 20 (ジャンプコミックスDIGITAL)

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