翔龍shoryuの忍たま日記

『忍たま乱太郎』について色々と書いていくブログです。『ドラゴンボール』や藤崎竜さんの『封神演義』のレビューも書いています。

「崑崙山2爆裂4連発!!!」 『封神演義』閑話02

「崑崙山2爆裂4連発!!!」
封神演義』閑話02

 

3年振りとなる閑話シリーズ第2弾。
こういう日常ものをもっと見たかったのだが当時の少年ジャンプでは難しかったかな。当時の少年ジャンプはバトル作品が多く、それらの作品はバトル中心の構成で日常話は殆ど描かれていなかった。
自分は今の少年ジャンプは読んでいないので分からないが、今だったらこういう日常話も受け入れられるんじゃないかなと思う。それか本編とは別にぷちキャラを主役にした番外編が作られるとか。

 

崑崙山と金鰲島の落下地点で六魂幡と禁鞭を探す楊戩。そこに現れたのは一足先に禁鞭を回収していた張奎だった。「こんな所で何をしている?」と楊戩に尋ねた張奎だが、そういう張奎の方こそこんな所で何をしていたんだろうか?
聞仲の禁鞭が落ちていたのは崑崙山と金鰲島の落下地点のはず。楊戩は太公望達が崑崙山2で発進した時からずっとここにいるので、その時に張奎が禁鞭の回収に来ていたら楊戩に発見されていたであろう。しかし、楊戩は張奎が禁鞭を回収した事を知らず、張奎の方も楊戩が一人残っている理由を知らなかった。つまり、張奎は太公望達が崑崙山と金鰲島の落下地点に集結する前に既に禁鞭を回収していたとなる。おそらく澠池城の攻防が終わった後すぐに回収に来たのだろう。と、なれば、この回の張奎は「再び崑崙山と金鰲島の落下地点にやって来て、そこで楊戩と会った」となる。張奎が戻ってきた理由は不明だが、後に太公望達と合流した際に太公望達に対する敵意を見せなかった事から太公望達と戦う為ではなかったようだ。そうなると、聞仲の敵であった妲己と戦う為に太公望達と合流しようとしたと考えられる。

 

尚、今回の話で崑崙山2は一月と一週間の足止めを食らう事になるのだが、楊戩と張奎が合流するのは崑崙山2が蓬莱島に到着してからであった。おそらくだが、太公望側から崑崙山2の足止めを聞かされた楊戩と張奎はその期間を利用して六魂幡と禁鞭を使いこなす修行をしていたのではないだろうか。

 

崑崙山2を動かすのに大量のエネルギーを消費する太乙真人の為に雲中子は薬を用意する。「雲中子」「ドーピング」と言う字面がヤバすぎる……。それ、まともな薬なのかな……?

 

崑崙山2のメンバーだが、個人的には金吒と木吒が不参加だったのが意外だった。太公望は「腕に自信のある者だけ乗り込め」と言っていた。さすがに哪吒や楊戩とはレベルが違ってしまっているが、金吒と木吒が蟬玉や雷震子より遥かに弱いとは思えない。
となれば問題は実力面より精神面であろうか。金吒と木吒は仙界大戦で自分達の師匠が封神されるのを見てから戦いらしい戦いが無い。一応、東伯や南伯と共に朝歌に向けて進軍している姿は描かれているが、牧野の戦いでも目立った戦闘シーンは描かれなかった。ひょっとしたら、金吒と木吒は仙界大戦で負った心の傷によって実際は再起不能に近い状態になっていたのかもしれない。
それではあまりなので他の可能性を考えると、聞仲との戦いで戦闘不能になった元始天尊を守る為に残ったと言う可能性が考えられる。

 

金吒と木吒の不参加にも驚いたが、もっと驚いたのが李靖が崑崙山2に乗り込んだ事であろう。いくら宝貝を手に入れたとは言え、戦闘経験がある金吒と木吒より強いとは思えない。と言う事で、ここで李靖についてちょっと考えてみたい。
李一家の話は哪吒のエディプス・コンプレックスから始まったが、哪吒は戦いを経る中で次第に変わっていき、現在では天祥の親代わりをするようになった。つまり、父母から離れて自分の家庭を持つようになった。母の殷氏も子供達にベッタリと言う感じではなく、実は終盤になっても哪吒に構い続けるのは父の李靖の方であった。これは最初のエピソードにあった「父として今度は自分が哪吒をやっつける」と言う父としての面子があったからであろう。
エディプス・コンプレックスの話で太公望は「子供は父を殺して母を得ようとする」と説明した。これは「父殺し」、すなわち「息子が父を越える」と言う事なのだが、これには「最初は息子より父の方が強い」と言う前提が必要となる。しかし、ここで「父の李靖が息子の哪吒より弱い」と言う問題が出てくる。李一家にはエディプス・コンプレックスの始まりである「息子より強い父」がいないのだ。
おそらく李靖はこの問題に気付いている。単純な戦闘力もなのだが、「あまりに修行が辛くて逃げ出して宝貝も貰えなかった父・李靖」の前に「最初から宝貝を身に付けた息子・哪吒」が誕生したと言うように、哪吒は生まれた瞬間から李靖のコンプレックスを刺激する存在であった。そこで李靖は仙人界に戻って修行をやり直し、趙公明攻略や仙界大戦にも(戦いはしなかったが)参加し、戦力的には足手まといになるのに崑崙山2にも乗り込んだ。その目的は趙公明や聞仲や女媧の打倒ではなく、あくまで「宝貝を使って哪吒に勝つ!」であったと思われる。まぁ、結局は負けてしまったが……。
そんな李靖だが、後の話で哪吒が王貴人に倒された場面を見てショックを受けていた。「哪吒と戦って勝つ」とは「哪吒を傷付ける」事でもあるのだが、実際に哪吒の傷付いた姿を見るとショックを受けてしまう。何だかんだ言って父の李靖は息子の哪吒が傷付くのを見たくはないのだ。「自分は息子が傷付くところを見たくない」と気付いてしまった以上、もう李靖は哪吒を攻撃する事は出来ない。結局、偉大な父として息子に臨む事は出来なかったが、それでも自分と哪吒は親子なんだと感じる事は出来たと思われる。
李靖が再び仙人界で修行して宝貝を手に入れたのは全て「哪吒に勝つ為」であった。その目的が無くなった以上、李靖は仙人界に関わる必要も宝貝を持つ必要も無くなった。そして最終回の李靖は初登場時と同じように人間界で妻と一緒に過ごす事となった。

 

韋護の「太乙さん」と言う呼び方が新鮮。
そう言えば本作は師弟関係があるからか「さん付け」の関係ってあまり無かったな。

 

十二仙の事を思い出す道行天尊。最初に挙がった名前は玉鼎真人であった。550年前の十二仙会議でも玉鼎真人に遊んでほしいと近付いているし、道行天尊が最も心を許せる相手だったのかな。

 

個人的に太公望と竜吉公主の関係が好き。
単なる同門と言うにはちょっと距離が近い感じがする。でも、恋人や姉弟関係と言うには距離が遠い。その微妙な距離感と言うのが。
個人的に、太公望がやたらと燃燈道人に絡むのは竜吉公主を巡ってのちょっとした三角関係なんじゃないかなと思っている。

 

歴史の道標六 -ワープゾーン-」に続く。

 

 

封神演義 20 (ジャンプコミックスDIGITAL)

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