shoryu20の忍たま日記

『忍たま乱太郎』について色々と書いていくブログです。藤崎竜さんの『封神演義』と柴田亜美さんの『南国少年パプワくん』のレビューもあります。

「導なき道へ…㊦」 『封神演義』第202回

「導なき道へ…㊦」

封神演義』第202回

 

伏羲と女媧の戦いも遂に決着。

伏羲と女媧の対立だが劇中ではどちらが正義でどちらが悪かと言う分けられ方はされていない。むしろ、かつての王奕は燃燈道人の問いに「正義である必要などない」と答えている。女媧が地球の歴史を歪めて故郷のコピーにしようとし、伏羲が地球を女媧の支配から解放しようとするのなら前者は悪で後者は正義であると言えるかもしれないが、それも伏羲は「ただ自分が気に入らなかったからそうしただけ」と答え、自分の行いが正義であるとは言っていない。

かつて太公望太上老君に向かって「わしは遠い未来の事にまで責任は持てぬし、未来を救えると思えるほど傲慢にはなれぬよ。わしらに出来るのはわしらが正しく使った世界を後の人々へバトンタッチする事であろう? 人類の歴史がどこへ行きつくか、…その結果はわしではない誰かが見ればよい」と告げた事があるが、伏羲の考えもおそらくは似たようなものだったのだろう。今の自分達が正しいと思える事をし、自分達の時代が終わったら後の世代へとバトンタッチする。その考えから見たら、いつまでも地球の歴史に干渉し続ける女媧の行いは「気に入らない」ものだったのだ。

本作では主人公の太公望は始祖の一人で封神計画の発案者である伏羲だった事が判明する。テーマを考えたら、地球人・太公望が仲間を率いて歴史の道標・女媧を倒すとした方が「弱かった人々が力を合わせて支配者を打ち破る」と言う構図になってスッキリとなる。それが主人公の太公望も女媧も同じ始祖だったとした事で「地球に降り立った宇宙人達による長い内輪揉め」と言う構図になった。しかし、太公望太上老君に告げた話を考えると、これは「仲間の不始末を自らの手で処理し、地球を次の世代に引き渡す」と言う構図が見えてくる。始祖と言う神々の話はここで終わり、これからは人間や仙道や妖怪と言った地球に生まれた者達が主役となる時代が始まるのだ。

では、支配者である女媧を倒して地球を地球出身者達に引き渡した伏羲の行いはやはり正義だったのではないかと言う話になるが、それがそう簡単にはいかない。女媧が「この星を私から解放してこの星の生命体が幸福になると思っているのか?」と問うたように、女媧の支配から外れた地球の歴史が地球出身者達にとって幸せなものになるとは限らないし、女媧の支配から離れた地球が女媧の故郷の星以上に文明を発達暴走させて宇宙に被害をもたらす可能性もある。そうなったら、地球を女媧の支配から解放した伏羲の行いは正義どころか悪となる。

ただ、伏羲によると「んな事しらんわ」との事。おそらくは「そんな未来の事にまで責任は持てない」なのであろう。あくまで伏羲や太公望は現時点で自分がやれる事を精一杯やる。それが正義かどうかと言う評価はまた別の話なのだ。

 

上に書いたのとは別の話になるが、伏羲が自分の行いを正義ではないとしたのって、仮に自分の行いを正義とすると敵対する女媧が悪になってしまうので、女媧を悪にしない為に自分も正義にしないとしたのかなと思ったりもする。

 

女媧によると「女媧と他の始祖が戦う理由は地球に降り立った時から分かりきった事」だったらしい。地球に降り立った時に始祖達は地球の生命体と共に生きる事を決めたが、女媧は最後まで故郷の星に対する「IF・もしも」を捨てられなかったし地球の生命体と共に生きる事を選べなかった。この溝を埋めない限り、女媧と他の始祖の戦いは避けらなかった。前回の話で伏羲は女媧に対して「もうやめぬか?」と尋ねるが、それは女媧が今までの考えや感情を捨てなければいけない事でもある。そんな事が出来たらこの戦いはとっくの昔に回避されていたはず。だからこそ、女媧の答えは「伏羲よ…。おまえは優しい男だな…。だが、真に私を思うなら、これ以上何も言わずに…戦え!!!!」だったのだろう。女媧はもう後戻りできなかったのだ。

もう後戻りは出来ないが、たった一人で生き続けていた女媧の心は孤独に苛まれていた。だから彼女は敗北の瞬間に「い…いやだ…。一人で逝くのは…もう一人は…」と涙を流し、最後のわがままとして伏羲に「一緒に消えてくれ」と頼む。

支配者として地球を少し離れた所から見ていた女媧が最後まで独りぼっちだったのに対し、地球の中に入った伏羲は多くの仲間達にその身を案じられるようになっていた。最後も伏羲は死を受け入れるも妲己によって助けられ、それに対して女媧は妲己に助けられず最後のわがまますら叶えられずに一人孤独に死んでいった。

女媧の自業自得なところもあるのだが、さすがにちょっと可哀相になる。

 

女媧の「一緒に消えてくれ」と言うわがままを聞いた伏羲は「ま・いっか…」と返答。自分の後ろに四不象や武吉や楊戩と言った多くの仲間達がいて、竜吉公主まで加わって皆で自分を救おうとしている事を知りながら、伏羲はそれでも女媧との死を選ぶ。それは四不象達と言った生きている仲間達に伏羲を死から連れ戻す力が無かったと言う事になる。女媧が最後まで孤独であったように、伏羲も多くの仲間に囲まれているように見えて実は孤独だったのか。そこに地球と融合した妲己が現れて伏羲ではなく太公望へと問いかける。

「本当にそれでいいのん? 太公望ちゃん……」。

伏羲、いや、太公望の答えは果たして…。