shoryu20の忍たま日記

『忍たま乱太郎』について色々と書いていくブログです。藤崎竜さんの『封神演義』と柴田亜美さんの『南国少年パプワくん』のレビューもあります。

「扉の向こう」 『南国少年パプワくん』第35話

「扉の向こう」

南国少年パプワくん』第35話

 

これまでの話でもコタローの危険性は仄めかされていたが「マジックと同じく両目が秘石眼」だとか「サービスですら秘石眼をコントロール出来ず友人を死なせてしまった」とか言うふうに間接的に示されていたの対し今回の話では遂にコタローの危険性が真正面から描かれる事となった。

 

これまで普通の子供として描かれていたコタローの変わり方が衝撃。

「来たんだね、お兄ちゃん!!」やテレパシーでシンタローを部屋に呼び寄せる場面や「ばいばーいパパ♡」等で6歳と言う年齢とは不相応に描かれている表情が背筋をゾッとさせる。

 

前回の話のサブタイトルである「希望への扉」とは具体的に何を指しているのかこの時点ではまだ明かされていないが、「扉の向こう」と言うサブタイトルが付けられた今回の話ではシンタローは扉の向こうにコタローと言う「希望」を求めていたのだが、その希望は絶望へと変わってしまった。

尚、劇中では主にシンタローの視点で話が進んでいるが、コタローから見ても自分を閉じ込める扉の向こうには「希望」があったと思われる。

シンタローもコタローも扉の向こうに「希望」があると思ってその扉を開けるのだが、そこでもたらされた結果は希望とはほど遠いものであった。

 

結局はサービスはシンタローをマジックの所へと連れて行ってしまった。

ルーザーの死を発端にしてサービスはマジックとルーザーの子供を取り替えたのだが、取り替えた後に改めて何かアクションを起こすと言う事は無かった。ルーザーの子供であるシンタローを鍛えてマジックを越えさせようとしたのは「ルーザーの子供にマジックを討たせる」と言うサービスなりの復讐なのかとも思ったが、パプワ島に来てからガンマ団日本支部に帰るまでのサービスの言動を見ると、あまりマジックを困らせようとする意思が感じられず、むしろ子供達との関係に悩む兄を助けようとしているように見える。

ひょっとしてだが、サービスはマジックへの復讐はもう止めているのではないだろうか。昔はちょくちょくシンタローに会いに来ていたのが7年前の修行を境に姿を見せなくなったとなっているので、7年前の修行の時にサービスの心境に何かしらの変化があったと考えられる。

7年前の修行を描いた「サービス -秘石眼を持つ男-」でサービスが最も驚いたのはマジックがシンタローに一族の秘密を何も知らせていない事とシンタローは秘石眼でない事であった。サービスは子供との関係に悩み苦しむ兄を見て復讐心が薄れたのかもしれない。そして、ルーザーの子供であるシンタローが一族の呪いとも言える秘石眼を持っていない事を知り、兄への復讐より一族の新たな可能性に賭けようと考えたのかもしれない。マジックが秘石眼でなくてもシンタローを息子として大事に扱っているのを見て、サービスはマジックのもとでシンタローが成長して青の一族を秘石眼とは関わりの無いところへと導いてくれるのを期待したのかもしれない。

 

サービスからすれば、自分の秘石眼によって死んでしまったジャンと瓜二つのシンタローが青の一族でありながら秘石眼を持っていないと言うのは何か運命めいたものを感じた事だろうな。

 

パプワ島ではヨッパライダーが再登場している事で前回のお花見回から1年が経過している事が分かる。イッポンタケの話でコタローが「もう一年経っちゃう」と言っているので、シンタローは7月頃にパプワ島にやって来て、翌年にヨッパライダーやイッポンタケの話があり、さらにその翌年の春頃にパプワ島を去ったとなる。(第0話ではガンマ団を脱走してから2年に亘ってパプワ島で過ごしているとなっている)

 

人間で初めての友達だったシンタローが去って悲しみにうちひしがれるアラシヤマだったが、同じくシンタローが去って寂しいイトウくんとタンノくんが「私達は仲間よ」と言って3人は意気投合。それを見てのミヤギの「ついに生物の一部と化したかアラシヤマ…」と言う哀れみが個人的にツボ。ミヤギって普段は騒がしいタイプなんだけどツッコミを入れる時は静かにツッコむよね。

 

津軽ジョッカーの回でもパプワとコタローを繋げた描写があったが今回はパプワとコタローのシンクロをより強くし、パプワは「僕と同じ奴がいる」として遠い場所にいるコタローの存在を感じ取るほどとなっている。

こうしてシンタローを軸に青の一族のコタローと赤の一族のパプワが対の関係となったのだが、実は両者の話はこれ以降はあまり掘り下げられず、この後の話は青の一族のマジックの兄弟の人間関係を中心に進んでいく事となり、パプワとコタローの本格的な絡みは『PAPUWA』で描かれる事となった。

そう言えば、コタローがいつもぬいぐるみを抱えているのって、パプワとチャッピーの関係と対比させているのかな?

 

マジックの側近のガンマ団員の名前がティラミスとチョコレートロマンスと判明。ティラミスはともかく、さすがにチョコレートロマンスは思わず二度見した。

 

シンタロー「コ…コタロー」、

チョコレートロマンス「いたぞッ!」、

ティラミス「捕まえろッ!」、

シンタロー「すっかりお兄ちゃん好みの美少年に成長して…」、

チョコレートロマンス「何か言ってるぞッ!」、

ティラミス「無視しろッ!」。

この時のティラミスとチョコレートロマンスの掛け合いが秀逸!

そしてシンタローはもう完全OUTなレベルに…。

 

「あんなクズでもやな事に一応親なんだぞ」。

凄い事を言っているが、これがシンタローの本心なんだろうな。

反抗もするし認められない部分も多々あるけれど、「マジックは自分の親」と言うのはシンタローの中では揺るぎのないものだったのだ。

 

コタローの暴走についてマジックは「コタローはわがままで非道い事をしている」としてサービスは「コタローには善とか悪とかいう感情自体がもともとない」としているが、第0話を見ると閉じ込められる前のコタローには善悪の判断がちゃんとあった事が分かるし、3歳から6歳まで部屋の中に閉じ込められていたら色々と溜め込んでいたものを爆発させてしまうのも無理が無いと思うので、ここはシンタローが言った「かわいそうになァ、コタロー! 学校にも行けず、こんな所に何年もいたんだもんなァ。物事の善悪がわかんなくなってんだよなァ」が最も正しい認識だと思う。

 

青の一族や秘石眼の力については詳しく語られていないが今回の話の描写を見るに秘石眼の力が強ければテレパシーやサイコキネシスを使えるようなので、超能力者(エスパー)よようなものなのかなと感じる。秘石眼や秘石を使えば念力を増幅させて眼魔砲の威力や命中精度を上げる事が出来るみたいな感じかな。

 

今回の話は「コタローの暴走」と言う第1話の時点では想像もしていなかった展開で衝撃の連続であった。特にラスト4ページを初めて読んだ時の衝撃は今でも忘れられない。

 

柴田亜美さんの作品で『パプワくん』と同時期に連載されていた『変身王子ケエル』と言う作品があるが、その第6話「夢花びら」は「家に閉じ込められた少年が超能力で暴走する」と言う内容でコタローと通じる部分が多々ある。

「夢花びら」の結末を見ると、『パプワくん』でもコタローの話を深く掘り下げていったら最終的には同じ結末に辿り着いてしまっていたのかなと思う。なので、コタローが持っていたテーマを故人で大人であるルーザーへとスライドさせて、コタロー自身の罪と罰の話はちょっと薄められたのかもしれない。

 

第30話までの『パプワくん』は白・柴田亜美で『変身王子ケエル』は黒・柴田亜美で第31話以降の『パプワくん』は白の中に黒が少しずつ入り込んでいったと言う感じかな。

 

「ごめん、パプワ。オレ、約束果たせねぇ」