shoryu20の忍たま日記

『忍たま乱太郎』について色々と書いていくブログです。藤崎竜さんの『封神演義』と柴田亜美さんの『南国少年パプワくん』のレビューもあります。

「始(ま)りの終末」 『南国少年パプワくん』第44話

「始(ま)りの終末」

南国少年パプワくん』第44話

 

素朴な疑問なのだが、どうして「始まりの終末」でも「始りの終末」でもなくて「始(ま)りの終末」としたのだろうか? あえてこういうタイトルにしたと思うので何か意味があるのだろうけれど…。

 

PAPUWA HOUSEに戻ってきたアラシヤマは残してきたシンタローの事が心配で荒ぶりまくる。それに対してコージは「あわてたからってどーこォなる訳でもないじゃろぉ!」と言って、それよりも皆でシンタローが戻ってくるかどうか賭けをしようと提案する。それに対して皆はシンタローが帰ってくるに有り金全て賭けると言い、コージは「阿呆くさ。賭けにもなりゃせんわ」と笑う。つまり「どうして落ち着いていられるのか?」と言うアラシヤマの問いにコージは「皆はシンタローが帰ってくると信じているから」と返したのだ。

 

高松って老後の積み立てをしているんだ。意外と堅実な人生設計をしているんだな。

 

ジャンとシンタローが合体して一人の人間となった場合、その人格はジャン寄りとなるのかシンタロー寄りとなるのか?

ジャンともシンタローとも親しいサービスは「どちらがもどって来ることを私は望んでいるのだろう」と二人のうちのどちらかを選ばなくてはいけないと感じる。結果としてはジャンとシンタローは同一人物ではなかったので人格が融合する事は無かったが。

 

ジャンタローと白シンタローの最初の戦いは痛み分け。

白シンタローにとってシンタローは24年に亘って自分と言う存在を押さえつけて影の世界に封じ込めてきた邪魔な存在である。コタローの眼魔砲によってシンタローが一度殺された事でこの世に存在を現す事が出来た白シンタローは今度は自分の手でシンタローを殺す事で自分と言う存在を確固たるものにしようとする。

シンタローは実はマジックの息子ではなくて赤の番人である事が判明し、今は赤の番人であるジャンの肉体を得て精神も融合しようとしているが、白シンタローとの戦いを終えたシンタローが口にしたのは「俺はガンマ団最強の男だ!」であった。結局のところ彼は「マジックの息子」と言うものを捨てる事が出来なかった。(この後のパプワとの話でもシンタローは親父の事を話題に出している)

白シンタローはシンタローのアイデンティティであった「マジックの息子」を奪い去る存在で、シンタローは白シンタローに勝つ事で「ガンマ団最強の男=自分はマジックの息子」と言う肩書きを取り戻そうとしている。

もしシンタローが赤の番人として戦う事になっていたら、物語は赤の一族と青の一族の激突と言う分かりやすい図式になっていたが、シンタローは赤の番人よりマジックの息子と言うところに拘り続け、最終的にシンタローは赤の番人ではなくて青の番人であったと判明し、物語は赤の一族と青の一族と言う二大勢力の激突と言うより青の一族の人間関係を主軸とした展開となった。『キン肉マン』や『ドラゴンボール』と言った少年漫画は主人公チームと敵チームによる対決と言う話が多いのだが、『パプワくん』は敵チームとの対決よりも身内の人間関係に描写が多く割かれていて当時の少年漫画の中ではちょっと変わっていた印象がある。

 

シンタローの正体がジャンだと知ったハーレムは「私にも奴を殺さねばならぬ理由がある」と語る。これはハーレムが青の一族でジャンが赤の番人であると言う事もだが、後に語られるルーザー発狂の真相を考えると、サービスが25年前のジャン死亡の真相を知らないように早めにジャンを消してしまおうと考えたのかもしれない。また、愛息のシンタローの正体が赤の番人でルーザー死亡の一因となったジャンであったとマジックが知った時の心境を考えると、ハーレムはマジックに代わって自分がシンタロー殺害と言う罪を背負う覚悟だったとも考えられる。

 

「おまえを殺した時、初めて俺は俺になれるんだ!」と言う白シンタローの発言を聞いて「クレイジーだ!」と感想を述べるリキッドは特戦部隊の中でも普通に近い感覚を持っている事が分かる。一方でロッドは「気に入ったぜ!」と述べていて、こちらはヤバめな雰囲気を出している。

マーカーとGは「命令に従うのみ」と言う事で自分の感覚や心情よりも仕事を優先する人物である事が分かる。だがマーカーは「それが諸刃の剣であろうと!」と付け加えている事で、自分達にも被害をもたらすような状況でも命令であれば従うと言うロッドとは別のヤバさを見せている。逆にGは「諸刃の剣であろうと」と言っていないので自分達に被害をもたらすような命令には従わないと言う可能性を見せている。

この4人の微妙なズレがなかなかに面白い。

 

特戦部隊のネーミングは「リキッド」「マーカー」「G」「ロッド」と全てペンの名称になっている。だったらマジック総帥は「マジックペン」なのかとも思うが、どうやらこちらは無関係そう。

 

久し振りの登場となったマジック。いきなりの「殺すよ!」発言に驚くが、これはシンタローの正体が赤の番人であるジャンであると知ったから。青の一族の継承者としては当然の判断なのだが、マジックとしては辛い選択であったのだろう。せめて、ジャンタローがシンタロー寄りの人格でなくてジャン寄りの人格だったら、まだ辛さも減るかもしれないが。

 

コージ「しかしまぁ、なんちゅーか!」、

ミヤギ「だべなァ」、

トットリ「だっちゃ!」、

コージ「変わったのォ。シンタローも!」。

シンタローとパプワの再会を見たコージ達はシンタローの変化を口にするが、そのシンタローの変化を「笑顔」で言っている辺り、シンタローだけでなくミヤギ達も変わっている事が分かる。

実はこの場面でミヤギとコージは笑っているのだが、トットリとアラシヤマは笑っていない。それではこの二人は変わっていないのかと言ったらそうではなく、この二人は次の話と次の次の話でパプワ島に来てからどう変わったのか描かれる事になる。

 

「シンタロー。泣くのって悪いことか? ぼくはじいちゃが死んだ時泣けなかった。エンドウくんの時もくり子が帰った時も泣かなかった。だけど、おまえが島を出て行く時、ぼくは泣いてたんだと思う! 僕は強くなったぞ、シンタロー」。

自分が『パプワくん』で一番好きな場面。

台詞だけでも十分に泣けるけれど、そこにパプワとシンタローの色々な話を重ねると、さらに泣ける。『パプワくん』を知れば知るほど胸に来るものがある名場面だ。

 

「……俺は子供の頃、早く大きくなりたかった。信じてたんだよ、大人になったら強くなれるって、親父にも誰にも負けねぇって! 俺は知らなかったんだ。年をくうほど人は弱くなるなんて! 泣きてぇことばかりだなんて知らなかったんだッツ!!!」