shoryu20の忍たま日記

『忍たま乱太郎』について色々と書いていくブログです。藤崎竜さんの『封神演義』と柴田亜美さんの『南国少年パプワくん』のレビューもあります。

「封神の書」 『覇穹 封神演義』第1話

「封神の書」

『覇穹 封神演義』第1話

2018年1月12日放送

 

藤崎竜さんの原作は全て読んでいると言う前提で感想を書きます。

 

原作の「序章」を一気に描いた第1話。

 

冒頭で仙界大戦での太公望と聞仲の戦いが描かれているので、第1話からしばらくは太公望の回想と見る事も出来る。

 

「古代中国が舞台」と言う説明が殆ど無かったが、原作終盤で明かされる真実を考えると舞台は実は「未来」だった可能性もあるので、「古代中国」と言う部分は今後もあまり強調されないのかもしれない。

 

妖怪仙人については陳桐や王貴人との戦いもカットされているので、少なくとも序盤はあまり触れられず、あくまで太公望&西岐と妲己&聞仲&殷と言う構図で進むと思われる。後半に入ると楊戩の話があるので、どこかで妖怪仙人を大きく取り上げる話が出てくると思われる。

 

原作では封神計画の内容が二転三転したがアニメでは最初から「妲己を始めとする妖怪達を神界に封印する」「妲己亡き後の人間界を治める者として西岐の姫昌を立てる」と言う目的がハッキリと示された。これによって話がかなり分かりやすくなっている。

 

太公望は怠けていれば自分は人間界に下ろされると考えていた」と言う説明が無いので、アニメ版での太公望妲己打倒を願っていても具体的な行動をまだ起こしていなかったとなっている。太公望は申公豹や妲己と言った敵になりそうな存在に関する情報を殆ど持っていなかったが、これが「今すぐ自分が妲己打倒の任を授かるとは思っていなかった」として説明が付く。

 

四不象の父は元始天尊の乗り物として有名であった。四不象はまだ子供ではあるが、元始天尊太公望にスープー族を与えたと言う事は「今の太公望元始天尊の命を受けて動いている」となる。いわば四不象は『水戸黄門』における「印籠」のような効果を持つ存在と言える。

太公望元始天尊の指示を半ば無視していきなり妲己を倒しに行くが、そこで元始天尊から与えられた印籠とも言うべき四不象が妲己によって奪われ、その後、太公望が再び封神計画を実行する事を決めたところで四不象は申公豹によって戻される事となっている。

 

「センス最低」と言って申公豹を怒らせてしまう太公望。原作では「親切で注意したのに怒るの!? ヤベェッ!?」と言う感じだったが、アニメではその場面が無く、申公豹が怒るとすぐに打神鞭を使って申公豹の攻撃を防いでいる。申公豹は太公望の実力を探りに来たのだが、実は太公望も封神の書に最も強い存在として記されている申公豹の実力を知る為にワザと怒らせたのかもしれない。

 

申公豹との戦いを終えた太公望はすぐさま妲己を倒しに禁城に行く。太公望が言うには妲己の手下の中には術によって無理矢理手下になった者も多いからと言う事で、実際、この直後に太公望は黄飛虎と出会い、妲己の術にかかっていない優秀な人物も禁城には多い事を確信する。

 

太公望がたった一人ですぐに妲己を倒しに行ったもう一つの理由として、封神の書に最も強い存在として記されている申公豹の攻撃を食い止める事が出来たと言う自信もあったと思われる。封神の書では妲己は申公豹より弱いとなっているので、申公豹の攻撃を何とかする事が出来たので妲己の攻撃も何とか出来るだろうと考えた可能性がある。しかし、その考えは甘く、妲己は誘惑の術で四不象と打神鞭を奪い、戦わずに太公望を無力化させて捕らえてしまう。

 

太公望が紂王をさらうのは原作では妲己の誘惑の術を解く為となっているがアニメではその説明は無い。最初に元始天尊に「姫昌を次の王にする」と言われているので、紂王をさらって西岐に連れて行き、そこで姫昌に紂王を討たせるか捕らえさせるかする事で大規模な戦争をする事無く殷から西岐へ政権を委譲させようとしたのかもしれない。

 

太公望に向かって「力もないくせに蜂の巣をつっつく様なマネをするからだろ」と言った羌族は男性だったのか。原作を読んだ時は女性だと思っていた。この時に羌族の女性に非難された太公望が最後に羌族の邑姜に「あなたをとても誇りに思う」と賞賛される構図なのかなと自分は考えていた。奴隷の男性が太公望を非難した後に蠆盆によって殺され、その後、蠆盆によって父を殺された武吉と言う男子が太公望をフォローすると言う構図になるのかな。

 

蠆盆って、自分を倒そうとした太公望への仕返しの他に、密かに太公望と通じて妲己打倒を考えていた黄飛虎に裏切りは出来ない立場だと改めて示す為に妲己は用意したのかな。

 

羌族の奴隷が殷の役人に逆らったのを見て太公望が少し笑っている。殷の役人も人間なのだが、その死をあまり気にしていないところを見ると、アニメ版の太公望はこの時点では人間界の平和より自分の復讐を優先している事が分かる。上の感想で「アニメ版の太公望は申公豹の実力を知る為にワザと怒らせて攻撃を出させたのでは」と書いたが、実はこの場面だが、原作では一度は逃げようとしたが背後に羌族の村があったので逃げずに立ち向かったと言う展開になっているが、アニメ版ではその場面が無いので、「太公望は背後に羌族の村がある事を知っていたが申公豹の実力を知る事を優先させた」と見る事が出来る。このようにアニメ版第1話の太公望は人間界の人々の事を考えているようで実は考えが足りていないところがある。その結果として蠆盆の悲劇が起き、太公望は自分の浅はかさから多くの犠牲者を出した事を悔やみ、考えを改める事となる。

 

原作では最初は出ていなかった三大仙人や普賢真人や聞仲が早くも登場している。こう言うところは既に完結した作品をアニメ化する時の強みだなと思う。

 

*少し経って感想追加。

 

王貴人戦がカットされたので太公望が大した策も無しに敵の本拠地に乗り込んでやらかしちゃう人物になったけれど、逆に王貴人は序盤でいきなりやられちゃう噛ませキャラじゃなくなったと言う事で。

でも、それって王貴人が太公望に執着する理由も無くなっちゃうと言う事なのか。太公望に怒りを爆発させる王貴人が好きなんだけどな。

 

原作からカットされた場面が多いんだけど、逆に追加された場面もあるので、どうしてここでこの場面を追加されたのかと考えてみる。

まずは普賢真人とのエピソード。人気キャラを最初から出したかったと言うのもあると思うんだけど、ここでの二人の会話は「出来れば犠牲は出したくない」と言う内容で、第1話の太公望も犠牲をなるべく出さない為にいきなり敵の本拠地に乗り込むのだが、失敗して逆に多くの犠牲を出してしまった。

自分一人の力では犠牲を出さない戦いが出来ないと分かった太公望は第2話から仲間を集める事になるのだが結局はその仲間達も仙界大戦で殆ど犠牲にしてしまう事になるので、アニメは「どのような手段を執っても戦争は犠牲が出てしまうもの」と言う部分を強調した話になるのかな。

 

普賢真人はアニメだと出番が多くなっていそうだ。第1話だけでなく他の話にも何度か出て、今の太公望の考えは普賢真人に影響を受けた部分や普賢真人との会話を通して分かった部分が多いと言う感じになりそう。聞仲も第1話から出ているので、アニメ版は原作以上に太公望&普賢真人と聞仲&黄飛虎と言う構図が出てきそう。

 

アニメで追加になって気になった場面と言えば、やはり奴隷が反逆して殷の役人を死なせた時に太公望が笑ったところかな。原作では太公望はここで笑うような人物ではないと思う。

原作で太公望が笑った場面を思い浮かべると、仙界大戦のクライマックスで聞仲と殴り合った時と女媧との決戦で最後に笑った場面が印象的。前者はともかく後者は何か作者の意図がありそうな笑い方だった。ひょっとしてだけだが、アニメでは「奴隷が支配者に逆らう場面を見て太公望が少し笑う」のと「星の支配者である女媧を倒す時に太公望がニカァと笑った」場面を何かしらで繋げるんじゃないのかなと思う。

まぁ、ただ単に「殺されそうになった奴隷が頑張ろうとした。良かった」くらいで、役人の死にまで気が回っていなかっただけと言う可能性もあるが。

 

太公望がいきなり禁城に乗り込んだのは余計な戦いをしない為。

いきなり王と会えたのは黄飛虎の力添えのおかげ。

宮廷音楽家と名乗ったのは西岐で宴会があると言う話をする為。

妲己の目の前で紂王をさらうと言う大胆な方法をとったのは自分には最強道士・申公豹の攻撃を止めた打神鞭があるし、妲己はこの時点では空を飛べる事が明かされていないので四不象に乗って空に行けば逃げ切れると考えていたのかなと。

ところが誘惑の術によって打神鞭と四不象を取られたので、どうしようもなくなったと。

王宮に乗り込む展開は太公望の無策が批判されているが個人的には初対面の太公望を王に会わせてしまう黄飛虎の方が問題かなと。太公望を信じていたんだろうけれど、もし太公望の目的が「紂王の暗殺」だったら大変な事になっていたと思う。実際、封神計画は紂王に死んでもらわなくては困る事になっているわけだし。

 

蠆盆の後の話だけど、原作では太公望は四不象に触っていないんだけどアニメでは撫でたりしているんだよね。おそらくだけど、蠆盆で心が傷付き、無意識的に四不象に助けや救いや癒やしを求めていたのかなと思う。

原作だと仙界大戦の後も泣いている太公望と四不象の間には距離があるんだよね。(それでも楊戩や武吉よりも遥かに太公望に近いところに四不象はいたけれど) アニメだとこの場面での太公望と四不象の距離が原作よりも近くなっていそうな気がした。

 

蠆盆事件の後、太公望が「仲間を作る」と宣言した後に聞仲の場面を持って来るのが面白い。冒頭で二人が戦う場面があるのでこの二人は仲間にならない事が分かるんだけど「ひょっとしたら聞仲は太公望の仲間になる可能性があった」と示されている。

 

皆の感想を見て思った事だけど、今回の第1話の問題点って展開の速さと言うより「ここで一言説明を入れればスッキリするのに」と言う場面が多かったところかな。展開が早いとか情報量が多いとか言うより情報の出し方が上手くなかったと言う感じ。自分は原作を知っているので補完しながら見られるけれど、そうでない人は大変だろうなとは思う。

ガンダムを見ていない人は分からないたとえをしちゃうけれど、漫画版『封神演義』をTV版『Zガンダム』とするなら今回のアニメ『覇穹 封神演義』は劇場版『Zガンダム』と言った感じ。新訳『Zガンダム』は好きだけどね。場面の取捨選択で意味合いをまるきり変える事が出来ると言うのが面白い作品だった。